『うめぼしの謎』は欄外の落書きが面白い
ん?この変な顔の本はなんだケーン?
昔、エニックス(現スクウェア・エニックス)が出していた月刊誌に連載されていたんだ。
ちょっと読んでみるケーン。
パラパラ
えっ!?漫画のコマの周りに落書きだらけ
四コマのコマを外して「4マンガ」だケーン?
色々おかしいんだケーン!
ギャグ王とは
出版事業も行っていて、『ドラゴンクエスト4コマ漫画劇場』という単行本も売れに売れたんだ。
それで、漫画雑誌『少年ガンガン』を発行した。
当時は『ロトの紋章』や『魔法陣グルグル』といった今でも続編が作られているようなものも連載されていた。
そんな中1994年にギャグ漫画をメインにした『月刊ギャグ王』が発行されたんだ。ちなみに当時のCMがこれ。
『ギャグ王』というわりに、爆笑できる漫画が少ないし、地元の本屋でも取り扱っているところが少なかった。
鳥人間が読み始めたのは1996年くらいでちょうど『うめぼしの謎』の作者がインド旅行に行く直前の回だったが、その頃も、大きめの本屋を回ったりして買っていたものだよ。
それで、ちょうど1996年の12月号、この『うめぼしの謎』と『勇者カタストロフ!!』という『ギャグ王』創刊から人気のあった2大漫画が終わってしまった。
確か、その時の『ギャグ王』の表紙は『うめ謎』の主人公ムササビが「我もまた天へ」と「ギャグ王」のロゴの近くで言っていたな。
衝撃!作者・三笠山出月が高校生(当時)、欄外の落書きが編集部規制で黒塗り
友人から『うめ謎」の単行本を借りて読んだときに衝撃を受けたんだ。
しかも単行本一巻に作者が自分の写真をさらす、という暴挙にさ
編集部規制された落書き(三笠山出月『うめぼしの謎1巻』エニックスp32)
引用してみよう。
オットコマエな話:こんな話を聞いた。とある学校の入試で、「勇気とは何か説明せよ」という問題にあたり普通の人は、文章をつらねて説明をしている中、彼は全く手を動かさなかった。なんと彼は答案用紙を白紙で出したのだ!!何という発想だろうか!?そして彼は見事合格した。何とオットコマエな奴なのだろうか!!失敗の許されない場での前人未到の冒険!!感動すらおぼえる
三笠山出月『うめぼしの謎1巻』エニックスpp10-12さあ今月の「うめぼし」は受験があったので、今までのボツネタから引っ張り出してきた鬼のように面白すぎるネタばかりだ!後ろ3ページなんて、もう、地獄だぜ!
三笠山出月『うめぼしの謎1巻』エニックスp87何故とおったか本人ですらわからないこの2本、破ってよろしい、許す
三笠山出月『うめぼしの謎1巻』エニックスp92
実際、この作品はカルト的人気があってね。
単行本に一時期すごい値段がついて、『復刊ドットコム』というところで復刊リクエストがされて2003年に復刊されたんだ。
それがこれさ。
蔵出しには削除された落書きが多い
実は『うめ謎』単行本エニックス版は全2巻、しかも1996年8月号までのネタしか載っていない。つまり最終回までの4か月分のネタは載っていないことなる。
実は欄外の落書きにはエニックス版のみにあって、大都社版では削除されているものがある。例えば
今まで自分のマンガをツマらん、ツマらんと書いてきましたが、今月はかなりおもしろいので読者の方々は頭脳をフル回転して、マンガの理解につとめていただきたい。
ああ今月の私のマンガをつまらないという人々はなんと悲しい人々なのでしょうか。そういう人々はいったいどんなマンガを面白いと感ずるのでしょうか?彼らはきっと、深く考えないで読める簡単なマンガの方がよいのでしょう。
三笠山出月『うめぼしの謎2巻』エニックスp20
129~130ページに同じ4コマ漫画が収録されているが、次のようになっている。
ああ今月の私のマンガをつまらないという人々はなんと悲しい人々なのでしょうか。
三笠山出月『蔵出しうめぼしの謎完全版』大都社p130
鳥人間は、消し忘れだと推察している。
大都社版の作者あとがきから推論できる。
それにしても今こうして自分のマンガを読むと非常に激しくとてもベリー恥ずかしいもので、イカ臭くてたまったモンじゃあありませぬ
三笠山出月『蔵出しうめぼしの謎完全版』大都社p278
実際、最終回前の回、大都社版233ページで
「↓俺も含めてな」という落書きのみが残っている。この回はエニックス版には収録されていないので、確認できる資料はない。
だが、鳥人間が『ギャグ王』で読んでいたときは
「ああ、原先生や手塚先生の作品を読み返す……これらの傑作に比べ、今の時代の作品は……」
みたいな内容だったと記憶している。この「↓俺も含めてな」も消し忘れだね。
※令和5年(2023年)3月18日追記
ギャグ王1996年11月特大号購入、落書きの内容確認
「マンガについて我思ふ:手塚治虫大先生のマンガを読み返す…ああそのソーダイな物語のスバラしきかな
に、比べて今の世にハンランしている駄作どもは……美男美女やら売れたマンガのパクリやら……泣けるぜ!!『ギャグ王1996年11月特大号』p77
それでも当時はバイブルだった
実際、当時の大ファンのブログを見ると同じような心境になっている人が多いんだ。
当時学校で浮いていた鳥人間が、自分を貫くことができたのは、この『うめぼしの謎』という漫画があり、その作者の反骨精神あふれる欄外の落書きを読んでいたからさ。
自分のやり方を貫いて、編集部に規制されながらも、熱狂的な読者がついてくる。そんな姿にあこがれたんだよ。
たぶん、この作品を一番楽しめるのは、小学校高学年から中学生くらいだと思う。
その時期にこの作品を読んだ人たちが、復刊ドットコムに押し寄せて、再販に至った。再び手に取った、鳥人間を含む彼らは、小中学生の頃の感動は味わえなかっただろう。だが、それは大した問題じゃない。
当時面白いと思った、あるいは生きる支えになった本が再び手に入り、読める。それだけでうれしかったんだと思うよ。
パラパラ
ん?この「紅ヒー」って何だケーン?