アメリカ陸軍伝説の二世部隊・第442連隊戦闘団~日系人強制収容から生まれた部隊~

「バッカターレ!」

雉(Kiji)
雉(Kiji)
ん?何を見ているんだケーン?
DVD……映画かケーン?
ん?『二世部隊』(アマゾンプライム)って映画さ。白黒時代のものだけど、時々見返してしまうんだ
鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
雉(Kiji)
ケーン?二世……ブタイ?
芸能人か政治家の二世ケーンか?
あぁ……日本では知らない人も多そうだね。
戦前にアメリカに移民として渡った人を「一世」というんだ。英語版ウィキペディアにも「Issei」で項目があるほどには普及しているよ。

そして、アメリカで生まれた、日本の出自を持つアメリカ人を「二世」という言うんだね。「Nisei」も同様に英語になっているよ。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
雉(Kiji)
ケーン?えーと、日系のアメリカ人だけでできた部隊、つまり兵隊さんだケーンね?
でも、なんで二世だけの部隊ができたんだケーン?



アメリカ国籍を持ちながら強制収容された日系アメリカ人二世

少し長くなるから、結論から話すね。1941年の日本による真珠湾攻撃後、日本生まれの一世(アメリカ国籍なし)と、アメリカ生まれの二世(アメリカ国籍あり)は強制収容所に隔離・収容されたんだ。

それで、1942年11月、日系市民協会がソルトレーク・シティの会議で日系二世がアメリカへの忠誠心を示すためには、軍隊へ志願するしかないと、兵役につけるよう、ルーズベルト大統領に請願書を送ったんだ。

それを受け、1943年初頭米国政府は日系二世の兵役を認めるよう方針転換をしたんだ。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
雉(Kiji)
ケーン……国籍を持っていながら、出自だけで権利が奪われてしまう……恐ろしいんだケーン……
そうだね、権利を奪われた上で、米国への忠誠心を示すために兵役に就こうにも、そのことが禁じられていた。八方ふさがりだね。

でも1943年、米国政府は多数の項目からなる質問書を強制収容所に配布して、合格した者のみ兵役に就くことができるとしたんだ。

その質問27と28が調査項目の肝と言われている。

鳥人間(Birdman)
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  • 質問27 あなたは命令を受けたら、どこであれアメリカ軍の戦闘任務に服するか
  • 質問28 アメリカ合衆国に忠誠を誓い、天皇や日本政府の命令に従わないことを誓うか

雉(Kiji)
雉(Kiji)
これは、ノー、と答えたり不合格になったらどうなるケーンか?
投獄された人もいたようだよ。また、収容所内で見解が分かれ、日系人間で亀裂が生じたりもしたらしい。

ともかく、まずはハワイで、少し遅れてアメリカ本土で日系人の部隊、二世部隊が誕生したんだ。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
雉(Kiji)
………

ハワイの第100歩兵大隊、本土の第442連隊戦闘団(442部隊)~血で示す忠誠~

まずは日系人の人口割合が高かったハワイで第100歩兵大隊が結成、1943年夏にヨーロッパのイタリア戦線に投入されたんだ。

一方、アメリカ本土では1943年2月から第442連隊戦闘団が結成された。

この部隊は、第442歩兵連隊、第522野砲大隊、 第232戦闘工兵中隊からなり、訓練を重ね、1944年3月にヨーロッパ戦線へ投入されたんだ。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
雉(Kiji)
ケーン……軍隊に入れたのはいいけど……やっぱり戦死したり、怪我をしたりすんだケーン?
悲しいけれど、その通りなんだ。

先にイタリアに投入された第100大隊は「モンテ・カッシーノ攻略作戦」などで大いなる戦果を挙げるが、犠牲も大きかった。

作戦後、第100大隊は作戦可能な部隊としては認められないほどの少人数しかいなかったんだ。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
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……文字通り、流した血で忠誠を示したんだケーンね。
その後、第442連隊戦闘団の一部が加わって戦力が回復した。

第100歩兵大隊は、第442連隊戦闘団内の第442歩兵連隊内の第1大隊に編入されたのだけど、戦果に対する敬意から第100歩兵大隊の存在と名がそのまま認められたんだよ。

つまり、
第442歩兵連隊第1大隊(第100歩兵大隊)
という感じだね。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
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徐々に二世部隊が認められていったんだケーンね!

Lost Battalions~失われた大隊、テキサス大隊救出作戦~

1944年10月442部隊はフランスのブリュエールを解放、その後ドイツ軍に包囲されたテキサス大隊(テキサス出身者の大隊)の救出作戦に従事するんだ。

ドイツ軍の反撃もすさまじく、442部隊の損害も甚大だった。それを象徴するエピソードを紹介しようか。

鳥人間(Birdman)
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この激戦に参加したダニエル・イノウエの自伝を引用して、前掲『二世』のなかでは次のように書かれている。

「ダールクィスト将軍(第三六師団長少将ジョン・E)が、われわれを親しく表彰するために、連隊を呼出して賜暇行進をさせようとしたとき、将軍は指導官に向かっていった。

”大佐、私は全連隊がこの式に参列するようにといったはずだ。きみの配下のものたちはどこにいるのか”

すると部隊の犬づらども(兵卒)の誰彼みなと同じように骨の髄まで疲れ果てていたベンス大佐は答えた。

”閣下、あなたがご覧になっているのが全連隊です。各中隊とも前哨の任についている二名を除いて、これが第四四二連隊戦闘団の生存者全部です”」

猿谷要,篠輝久『意外な解放者』情報センター出版局p84

雉(Kiji)
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……言葉も出ないだケーン
さらに救出されたテキサス大隊の兵のインタビューもある。
鳥人間(Birdman)
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救出されたテキサス兵ジョセフ・パーパー上等兵は、かれの郷里の新聞に寄稿している。
「テキサス大隊の将校たちは、みな口をそろえて日系アメリカ兵の勇敢な戦闘ぶりを称えていった。『兵士として、真のアメリカ兵として、かれらは誰よりも抜きんでた最高の兵士であった』と」
渡辺正清『ヤマト魂 アメリカ・日系二世、自由への戦い』集英社p192

雉(Kiji)
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現場で助けられた人の言葉は重いんだケーン……

ドイツのダッハウ、ユダヤ人強制収容所解放

さて1945年4月、442部隊の第522野砲大隊のドイツ戦線に入っていた。ミュンヘン近辺の端や道路を爆破し、ドイツ軍の逃亡を妨げることが主任務だったんだ。

ゲシュタポと親衛隊の司令部がミュンヘンにあったんだけど、その近くダッハウという都市に、ユダヤ人の強制収容所があったんだ。

結論を言ってしまえば、二世部隊である第522野戦砲兵大隊が、ダッハウの中央収容所と補助収容所の解放作戦に参加、連合軍兵士の中で初めてダッハウの中央強制収容所に侵入した。

しかし、この事実が公開されたのは1982年になってからだ。また引用するよ。

鳥人間(Birdman)
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米誌「ニューヨーカー」(一九九一年十一月十一日号)に、サンフランシスコ在住の歴史家(非日系人)の証言として、

「米陸軍は日系二世に対し、ダッハウ収容所解放の事実を決して口外してはならないと命令し、もし命令に反したら軍法会議にかけるとおどしたため日系二世は口にしなかった」

という記述が見える。

第五五二野戦砲兵大隊(四四二部隊所属)がダッハウに最初に到着した一部隊であった事実は、戦後もずっとのちの一九八二年になって初めて公にされた。前にふれた同大隊医療班にいた日系二世イイチロウ・イマムラの日記の存在で初めて明らかにされたのである。

渡辺正清『ヤマト魂 アメリカ・日系二世、自由への戦い』集英社p218

雉(Kiji)
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アメリカで強制収容所に隔離され、
忠誠を示すために軍務についた二世部隊が
強制収容所に隔離されたユダヤ人を救出する……
不思議な巡りあわせだケーンね……

戦後の二世~日系人名誉回復への戦い~

第二次世界大戦も集結し、1946年7月15日、ワシントンで日系二世兵のパレードが行われた。

トルーマン大統領も参加し次のように述べた。

鳥人間(Birdman)
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「諸君は国家の自由のために我々とともに戦った。諸君が成し遂げた偉業にアメリカ国民がどれほど感謝しているか、私は言葉では表現できない。諸君は戦地で敵と戦ったばかりでなく、アメリカ内の偏見とも戦った。そして、勝ったのである。諸君はいま、それぞれの郷里に帰るところである。偏見との戦いは今後とも続けていかなければならない」
渡辺正清『ヤマト魂 アメリカ・日系二世、自由への戦い』集英社pp252-253

雉(Kiji)
雉(Kiji)
二世はアメリカ市民なのに犠牲を払わないと認めてもらえなかったんだケーン……
そうだね、まだ二世の戦いは続くんだ。
日系一世への市民権付与、法律の改正……

でも二世たちの頑張りで徐々に日系人の地位が向上していくんだ。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
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とりあえずはよかったんだケーン!
二世部隊にはアメリカ軍の最高勲章である「名誉勲章」を受賞した人が多くいるよ。

映画『ベスト・キッド』のミヤギさんも442部隊にいて名誉勲章をもらったという設定なんだ。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
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ケーン、日系二世の歴史についてもっと勉強したいだケーン!
なにか参考書とかあれば教えてほしんだケーン!
いい心がけだね。

学習するときは、「同じことを日本で起こさないようにするにはどうすればいいか」を考えながら学ぶといいね。

鳥人間(Birdman)
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アメリカの合衆国憲法修正第四条

相当の合理的理由がない捜索・逮捕・押収の禁止

不合理な捜索及び逮捕・押収から、その身体・家屋・書類及び所有物の安全を保障される人民の権利は、これを侵してはならない。宣誓または確約によって証拠づけられた相当の理由に基づくものであって、捜索すべき場所及び逮捕すべき人または押収すべき物件を特定して記載するものでなければ、いかなる令状も発してはならない。

と、あるんだけど、日系二世については、出自が日本というだけで、身柄の拘束、監禁ができるようになってしまった。

これは、国が自国民の安全保障をしないで、権利を剥奪しているということになるね。

これが認められると、日系人だけでなく、適当な理由で政府の意にそわない人間を拘束できてしまうことになる。

そういった背景や法的な根拠を考えながら勉強してほしいな。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
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雉は歴史から学ぶんだケーン!

映画

  • 『二世部隊』アマゾンプライム(DVDも有)
    白人の中尉が主人公、アメリカ本土で二世兵士の訓練を行う。
    中尉の猛訓練に対し、二世たちは日本語「バカタレ!」と返事をするが、中尉は意味がわからない。
    ヨーロッパ戦線で戦いを重ねるごとに、中尉と二世兵士たちの間に絆が生まれていく。
  • 『ベスト・キッド』アマゾンプライム(DVDも有)
    イタリア系アメリカ人の高校生、ダニエル・ラルーソ。転校先のお坊ちゃんジョニー・ローレンスの元彼女にちょっかいを出そうとし、ジョニーの空手で痛めつけられる。
    その後、ジョニーの通う空手道場「コブラ会」を敵に回し、トーナメントでコブラ会と戦うことに。
    アパートの管理人である日系人ミヤギさんが空手の達人であることを知り、弟子入りをするが、修行内容は車のワックスがけ、塀のペンキ塗りなど雑用ばかり!
    はたして、トーナメントでコブラ会を倒すことができるのか。
  • 『ザ・ブレイブ・ウォー 第442部隊』アマゾンプライムのみ
    これが“米軍特攻隊”の悲劇の真実!1941年、日本が真珠湾を攻撃した翌年、ハワイに住む日系人の約1400人が第100歩兵大隊として活動を開始。その後、ルーズベルト大統領が約12万人の日系人を10ヵ所の強制収容所へ送る大統領令に署名し、1943年にはハワイと強制収容所から1万人を超える日系人がアメリカ陸軍の第442連隊戦闘団に志願した。そんなある日、軍曹ジミーにもとに、友軍のテキサス大隊がドイツ軍に包囲されたと情報が入る。すぐさま救出命令が下るものの、ドイツ軍の戦力は倍以上で、救出は絶望的な状況だった。
  • 『442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍』(DVDのみ)
    本作は日系アメリカ人として、星条旗を背負って戦う自尊心と愛国心、そして二つの祖国!)日本とアメリカとの間で揺れる心の葛藤を描いた問題作。と同時に戦争と平和を巡る兵士たちの個人史でもある。
    現在、元兵士たちは90代と高齢になり、当事者たちによる貴重な証言はこれが最後になるかもしれない。

参考書

  • 猿谷要、篠輝久『意外な解放者』情報センター出版局
    442部隊の概要がコンパクトにまとまっている。
    写真が多く、ユダヤ人強制収容所に関する記述多し。
  • 渡辺正清『ヤマト魂アメリカ・日系二世自由への戦い』集英社
    アメリカ版読売新聞に長期掲載されたドキュメント。現地でのインタビューが多く掲載されている。
    真珠湾攻撃から強制収容、第二次世界大戦後の日系人の地位向上まで幅広く載っている。
    ただし、読みづらい
  • ロジャー.W.アクスフォード『リロケーション日系米人強制収容所の証言』西北出版
    日系人強制収容の当事者に対するインタービュー集。
    強制収容が実行された1942年の段階で合衆国最高裁判所にまで上告したゴードン・ヒラバヤシ博士をはじめ、様々な証言が掲載。
  • 矢野徹『442』柏艪舎
    SF作家による小説風読み物。
    一部創作があるので、物語として読むこと。
  • 山崎 豊子『二つの祖国』
    アメリカに生まれ、アメリカ人として育てられた日系二世たち。しかし日米開戦は彼らに、残酷極まりない問いを突きつけた。アメリカ人として生きるべきか、それとも日本人として生きるべきなのか――。ロサンゼルスの邦字新聞「加州新報」の記者天羽賢治とその家族の運命を通して、戦争の嵐によって身を二つに裂かれながらも、真の祖国を探し求めた日系米人の悲劇を描く大河巨編!
  • Franz Steidl”Lost Battalions: Going for Broke in the Vosges, Autumn”Presidio Press
    妻が日系二世の作者が書いた本。ベトナム戦争に従事した経歴があるので、軍事作戦の図面や描写が正確である。英語。

 

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ケーン……頑張って勉強するんだケーン!

 

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