スペイン旅行記
- 1日目(鳥人間のスペイン5日間旅行(2018年)1.出国からスペイン上陸まで)
- 2日目(お買い物・鳥人間のスペイン5日間旅行(2018年)2.スペイン2日目、エル・コルテ・イングレス、地下鉄)
- 最終日(鳥人間のスペイン5日間旅行(2018年)4.最終回:オタクセンター、ラス・ベンタス市場)
闘牛士の行進から始まる
闘牛は、槍方、銛旗士、闘牛士の順番で出番があるんだ。
だけど、槍方の順番の前に、最初に闘牛士がカポーテというピンク色の布で牛を翻弄して、誘う。この間、闘牛士は牛の癖や性格を見極めるんだ。
その後、槍方が牛の首根っこを槍で突く。
牛が弱ったところで、銛旗士が、牛とすれ違いざまに短い銛を打ち込む。非常にスリリングだよ。
そして、最後に真打の闘牛士が現れて、牛をムレータという杖布で翻弄して、最後に剣でとどめを刺すんだ。
この行進は闘牛に関わる戦士たちのお披露目だね。
カポーテでの牛との対話~牛の性質、癖をさらけ出し、次につなげる
ピンクの布(カポーテ)は4~5㎏あるよ。
このカポーテを縦横に振り、牛を誘導して、癖や性質を見極めるんだ。
このシーンも日本人のイメージする闘牛に近いんじゃないかな
闘牛士はスマートな体だけど、力持ちなんだケーン。
馬も鉄の鎧で武装していて、なかなかの迫力だよ。
槍方(ピカドール)登場、槍で牛の力を弱らせる
槍方の乗る馬は、700㎏近く、さらに25㎏の鉄の鎧で武装しているんだ。
ある調査によれば、平均的な闘牛は500㎏を超えるんだ。
それに、角の攻撃に耐えられても、突進の衝撃で馬が横転することもあったらしい。
人間に有利な状況設定だが、気は抜けないよ。
あれ?上の写真、なんで馬のお腹を牛に向けているんだケーン?
これは「おとり」なんだ。
馬の右わき腹をめがけて突進してくるように仕向けているんだよ。
馬上で槍は右手で持つから、牛の首根っこに槍を突き刺しやすい体勢を作っているんだね。
ほら、次の写真ではうまく牛に槍が刺さってるよ。
それでも、角の一撃を食らえば生身の人間は吹き飛んでしまうから、まだまだ危険だ。
その状況で、短い槍だけで銛旗士が牛に立ち向かうんだ。
銛旗士~スリリングな仕事、かつ、闘牛士につなぐ重要な役割
一番地味に思われるが、闘牛士につなぐとても大切な立ち位置だよ。
短い銛を両手に1本ずつ持って、牛とすれ違いざまに刺す。
これを3回行う。
3回すれ違いざまに刺すなんて……
下手したら、闘牛士や槍方よりも危険だと思うケーン。
次の写真を見れば、いかに危険かは伝わると思う。
これを3回行ってから、ついに闘牛士の登場だケーンか?
闘牛士につなげる、重要な仕事なんだよ。
闘牛士登場、「真実の瞬間」
最初のピンク色の「カポーテ」とは違う、赤色の杖布「ムレータ」と剣を使って、牛を誘導する。
剣は常に右手で持っているんだ。
かなり危ないんじゃないかケーン?
これは写真だけど、実際に動いている姿を見ると、舞踏と見間違うくらいの優雅さだよ。
ムレータを操り、牛と人間が一体となったように、ひらりひらりと舞っていく。
その様子を見て、観客も一体となっていく。
闘牛とは本当に儀式だね。
この止めのことを「真実の瞬間」(la hora de la verdad:ラ・オラ・デ・ラ・ベルダード)という。
牛の肩甲骨の間に剣を刺し、つかの間のダンスパートナーに、闘牛士は止めを刺す。
ちなみに、
闘牛士の演技が見事だった場合……牛の耳が一つ
かなり見事だった場合……牛の耳が二つ
これ以上ないほど見事だった場合……牛のしっぽ
が闘牛士に与えられる。
ううむ……闘牛は野蛮だという意見もあるケーンが……
こうして学習すると、様式が決まった、牛と人間の生死をかけた儀式のようにも思えてくるケーンね。
それに対して、観客はブーイングをしていたので、やはり、牛を苦しませずに止めを刺すということが重要視されていると思ったよ。
ちょっと闘牛に関する描写を引用してみよう
命を賭けた死のダンス
だが、弱り切った牛であっても、人を殺すことなどわけはない。闘牛士は見栄を切り、拍手に笑顔で応えていても、その神経を極限にまで張り詰めていないと、命が幾つあっても足りない。闘牛場で命を落とした闘牛士のビデオ何本も見た。ノロノロと牛が闘牛士に”歩み寄る”。すでに、突進と呼ぶには、あまりにスピードが鈍っているのだ。「…ん?角の先が大腿のあたりを擦ったかな?」と思った次の瞬間、闘牛士の体が凄い勢いで跳ね飛び、角の上で独楽のようにくるくる開店する。……(中略)……半トンを超えるダンス・パートナーに比べて、人の体はあまりにひ弱く、脆い。どの瞬間にも、死の危険のない安全な闘牛などは存在しないのだ。
(EGG編集室(1997)『ヨーロッパ・カルチャーガイド6スペイン気分はいすもエスパーニャ』トラベルジャーナルp55から引用)
単なる見世物ではないんだケーン。
ちなみに闘牛を扱った小説や映画には次のようなものがある。
闘牛を扱った書籍
ヘミングウェイ『午後の死』
この『午後の死』は文庫になっていないから、へミングウェイ全集で読まなければいけない。
今回解説した闘牛の流れが、第10章で紹介されている。
闘牛という悲劇が3幕構成で、槍方の出番の第1幕が牛の圧倒的優位、槍を突き立てられるものの、牛が勝利を収めたかのように見える、という考察はなかなか興味深い。
ちょっと引用してみよう。
以上が闘牛の悲劇における三幕(または三部)であるが、第一幕の馬の部こそ、その後の成行きを卜するものであり、事実以後の部分を可能ならしめるもとでもある。第一幕においては、牛は全能力を完全に具えて登場し、自身と悪意に満ち、誇らしげに素早い動きを見せる。牛の攻める勝利はすべて第一幕に属する。第一幕の終わりでは、牛はほとんど勝利を手中におさめ終わったかに見える。牛は騎馬の男たちを場外に追い払い、今や場内彼一人だ。第二幕に至ると、彼は武器を持たぬ男のために翻弄されつくし、バンデリーリョで手ひどく痛めつけられ、自身とあてどなき盲目の憤怒は消え失せ、もっぱら一個の対象に憎悪を集中する。第三幕では牛はただ一人の男に直面する。
佐伯彰一訳(1956)(『ヘミングウェイ全集6持つと持たぬと 午後の死』三笠書房
正直、ヘミングウェイの小説は、小説や漫画などの表現者にとっては読む価値はあると思うが、現代の人間が読んだら今一つなものが多い。
まあ、それだけ現代の作家にマネされて手あかがついてしまった、ということでもあるんだけど。
話がそれたね。とにかく、この本は内容は素晴らしいだけど、翻訳が高くて手に入りにくい。近所の図書館をまず調べることをおすすめするよ
それなら原書、英語の本はどうなんだケーン?
紙の本もアマゾンやe-bay(英語サイト)、abebooks(英語サイト)でそれほど高くなく買える。
とりあえずアマゾンのリンク張っておくよ。
現在、e-bayで注文してあるから、読んだらまた感想を書くね。
ヘミングウェイ『日はまた昇る』
これは、第一次世界大戦を経験したアメリカの若者が世間に価値を見出せず、その日暮らしをしている話で、後半にスペインが舞台になる。そこで、若手闘牛士が出てきて、主人公たちの仲間の女性が恋をする、という話もある。
ヘミングウェイが闘牛にハマったんだろうな、ということが読み取れる描写もある。
英語小説の入門にいいかもしれないケーン。
闘牛への招待(文庫クセジュ)
目次より
第一章 闘牛の諸起源
第二章 十九世紀スペインのコリーダ
第三章 コリーダの拡大
第四章 二十世紀の美学的コリーダ
第五章 二十世紀闘牛の技巧と戦略
第六章 コリーダをめぐる言説
エリック・バラテ/エリザベト・アルドゥアン=フュジエ(1998)『闘牛への招待』白水社 目次から引用
ヨーロッパカルチャーガイド6スペイン気分はいつもエスパーニャ
闘牛だけでなく、1990年代のスペインの特徴を一冊にまとめた本だ。
研究書ではないが、旅行ガイドよりも詳しい説明が載っている、という感じかな。