鳥人間のスペイン5日間旅行(2018年)3.~2日目:ラス・ベンタス闘牛場

スペイン旅行記

 

 

雉(Kiji)
雉(Kiji)
前回(内部リンク)に引き続き、ラス・ベンタス闘牛場だケーンね。
そうだね。今回は丸々一回をかけて闘牛の流れを紹介するよ。
鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)



闘牛士の行進から始まる

闘牛士の行進の写真
闘牛士の行進
まずは、全出場者が音楽に合わせて登場するよ。

 

闘牛は、槍方、銛旗士、闘牛士の順番で出番があるんだ。

 

だけど、槍方の順番の前に、最初に闘牛士がカポーテというピンク色の布で牛を翻弄して、誘う。この間、闘牛士は牛の癖や性格を見極めるんだ

 

その後、槍方が牛の首根っこを槍で突く。

 

牛が弱ったところで、銛旗士が、牛とすれ違いざまに短い銛を打ち込む。非常にスリリングだよ。

 

そして、最後に真打の闘牛士が現れて、牛をムレータという杖布で翻弄して、最後に剣でとどめを刺すんだ

 

この行進は闘牛に関わる戦士たちのお披露目だね。

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

 

雉(Kiji)
雉(Kiji)
ううむ……日本では闘牛といえば闘牛士のイメージだったケーンが、実は3部構成なんだケーンね。。
そうだね。まずは最初のカポーテを使った闘牛士の見極めを紹介しよう。
鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

カポーテでの牛との対話~牛の性質、癖をさらけ出し、次につなげる

カポーテで牛を導く闘牛士の写真
ピンクのカポーテを使い、牛の性質を見極める闘牛士
上の写真のような感じで、牛を誘う。

 

ピンクの布(カポーテ)は4~5㎏あるよ

 

このカポーテを縦横に振り、牛を誘導して、癖や性質を見極めるんだ。

 

このシーンも日本人のイメージする闘牛に近いんじゃないかな

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

雉(Kiji)
雉(Kiji)
結構重いんだケーンね。

 

闘牛士はスマートな体だけど、力持ちなんだケーン。

そうだね。このカポーテが終わったら、ついに槍方(ピカドール)が登場する。

 

馬も鉄の鎧で武装していて、なかなかの迫力だよ。

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

槍方(ピカドール)登場、槍で牛の力を弱らせる

突進する牛に立ち向かう槍方の写真
牛を迎え撃つ槍方

槍方(ピカドール)が登場する。

 

槍方の乗る馬は、700㎏近く、さらに25㎏の鉄の鎧で武装しているんだ。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
雉(Kiji)
おお、この装備なら突進されても安全だケーンね。
そうでもない。

 

ある調査によれば、平均的な闘牛は500㎏を超えるんだ。

 

それに、角の攻撃に耐えられても、突進の衝撃で馬が横転することもあったらしい。

 

人間に有利な状況設定だが、気は抜けないよ

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

雉(Kiji)
雉(Kiji)
そうなんだケーンね。

 

あれ?上の写真、なんで馬のお腹を牛に向けているんだケーン?

よく気づいたね。

 

これは「おとり」なんだ。

 

馬の右わき腹をめがけて突進してくるように仕向けているんだよ。

 

馬上で槍は右手で持つから、牛の首根っこに槍を突き刺しやすい体勢を作っているんだね。

 

ほら、次の写真ではうまく牛に槍が刺さってるよ。

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

牛の首に槍が刺さった写真
槍が命中!

雉(Kiji)
雉(Kiji)
おお!槍が抜けないのか、牛の首で足を踏ん張って抜こうとしているケーン!
そうだね。さっきまで恐ろしいスピードで突進していた牛も、この槍を受けた後は、スピードダウンしてしまう

 

それでも、角の一撃を食らえば生身の人間は吹き飛んでしまうから、まだまだ危険だ。

 

その状況で、短い槍だけで銛旗士が牛に立ち向かうんだ

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

銛旗士~スリリングな仕事、かつ、闘牛士につなぐ重要な役割

さて、次は銛旗士(バンデリリェーリョ)だ。

 

一番地味に思われるが、闘牛士につなぐとても大切な立ち位置だよ。

 

短い銛を両手に1本ずつ持って、牛とすれ違いざまに刺す

 

これを3回行う

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)
銛を両手に持ち、牛に立ち向かう銛旗士の写真
牛に立ち向かう銛旗士

雉(Kiji)
雉(Kiji)
ケーン……雉はこの仕事絶対にできないケーン。

 

3回すれ違いざまに刺すなんて……

 

下手したら、闘牛士や槍方よりも危険だと思うケーン。

鳥人間もそう思う

 

次の写真を見れば、いかに危険かは伝わると思う。

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

すれ違いの瞬間の写真
すれ違いの瞬間
雉(Kiji)
雉(Kiji)
写真でもヒヤヒヤするケーンね。

 

これを3回行ってから、ついに闘牛士の登場だケーンか?

そうだね。この3回の銛打ちは、傷ついた牛に活を入れる意味と、闘牛士が最後の牛の性質チェックを行うという意味がある。

 

闘牛士につなげる、重要な仕事なんだよ。

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

闘牛士登場、「真実の瞬間」

そして、ついに真打登場、闘牛士だ。

 

最初のピンク色の「カポーテ」とは違う、赤色の杖布「ムレータ」と剣を使って、牛を誘導する

 

剣は常に右手で持っているんだ。

鳥人間(Birdman)
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牛を誘導する闘牛士の写真

雉(Kiji)
雉(Kiji)
体とムレータが近いケーン!

 

かなり危ないんじゃないかケーン?

危ないね。

 

これは写真だけど、実際に動いている姿を見ると、舞踏と見間違うくらいの優雅さだよ。

 

ムレータを操り、牛と人間が一体となったように、ひらりひらりと舞っていく

 

その様子を見て、観客も一体となっていく

 

闘牛とは本当に儀式だね。

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)
近づく牛をムレータに誘導する闘牛士の写真
ムレータで牛を誘導する
ギリギリで牛をかわす闘牛士の写真
ひきつけてから交わす

そして、牛と闘牛士、観客の息が合ったところで、牛に止めを刺す。

 

この止めのことを「真実の瞬間」(la hora de la verdad:ラ・オラ・デ・ラ・ベルダード)という。

 

牛の肩甲骨の間に剣を刺し、つかの間のダンスパートナーに、闘牛士は止めを刺す

 

ちなみに、

 

闘牛士の演技が見事だった場合……牛の耳が一つ
かなり見事だった場合……牛の耳が二つ
これ以上ないほど見事だった場合……牛のしっぽ

 

が闘牛士に与えられる。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
雉(Kiji)
(もらってどうするんだろうだケーン?)

 

ううむ……闘牛は野蛮だという意見もあるケーンが……

 

こうして学習すると、様式が決まった、牛と人間の生死をかけた儀式のようにも思えてくるケーンね

そうだね。鳥人間が見たときは、真実の瞬間で闘牛士が牛を仕留めきれず、別の剣で止め(とどめ)を刺していた。

 

それに対して、観客はブーイングをしていたので、やはり、牛を苦しませずに止めを刺すということが重要視されていると思ったよ。

 

ちょっと闘牛に関する描写を引用してみよう

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

命を賭けた死のダンス

だが、弱り切った牛であっても、人を殺すことなどわけはない。闘牛士は見栄を切り、拍手に笑顔で応えていても、その神経を極限にまで張り詰めていないと、命が幾つあっても足りない。闘牛場で命を落とした闘牛士のビデオ何本も見た。ノロノロと牛が闘牛士に”歩み寄る”。すでに、突進と呼ぶには、あまりにスピードが鈍っているのだ。「…ん?角の先が大腿のあたりを擦ったかな?」と思った次の瞬間、闘牛士の体が凄い勢いで跳ね飛び、角の上で独楽のようにくるくる開店する。……(中略)……半トンを超えるダンス・パートナーに比べて、人の体はあまりにひ弱く、脆い。どの瞬間にも、死の危険のない安全な闘牛などは存在しないのだ。
(EGG編集室(1997)『ヨーロッパ・カルチャーガイド6スペイン気分はいすもエスパーニャ』トラベルジャーナルp55から引用)

雉(Kiji)
雉(Kiji)
やはり、訓練を積んだ闘牛士がなんとか勝てるようになるという、牛と人間の圧倒的な力の差を考えた上での儀式だケーンね。

 

単なる見世物ではないんだケーン。

そうだね。その知識を持ったうえで闘牛場に行くと、闘牛が楽しめると思うよ。

 

ちなみに闘牛を扱った小説や映画には次のようなものがある。

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

闘牛を扱った書籍

ヘミングウェイ『午後の死』

これはアメリカの小説家アーネスト・ヘミングウェイが書いた、闘牛の解説書だ。

 

この『午後の死』は文庫になっていないから、へミングウェイ全集で読まなければいけない

 

今回解説した闘牛の流れが、第10章で紹介されている。

 

闘牛という悲劇が3幕構成で、槍方の出番の第1幕が牛の圧倒的優位槍を突き立てられるものの、牛が勝利を収めたかのように見える、という考察はなかなか興味深い。

 

ちょっと引用してみよう。

鳥人間(Birdman)
鳥人間(Birdman)

 

以上が闘牛の悲劇における三幕(または三部)であるが、第一幕の馬の部こそ、その後の成行きを卜するものであり、事実以後の部分を可能ならしめるもとでもある。第一幕においては、牛は全能力を完全に具えて登場し、自身と悪意に満ち、誇らしげに素早い動きを見せる。牛の攻める勝利はすべて第一幕に属する。第一幕の終わりでは、牛はほとんど勝利を手中におさめ終わったかに見える。牛は騎馬の男たちを場外に追い払い、今や場内彼一人だ。第二幕に至ると、彼は武器を持たぬ男のために翻弄されつくし、バンデリーリョで手ひどく痛めつけられ、自身とあてどなき盲目の憤怒は消え失せ、もっぱら一個の対象に憎悪を集中する。第三幕では牛はただ一人の男に直面する。
佐伯彰一訳(1956)(『ヘミングウェイ全集6持つと持たぬと 午後の死』三笠書房

ヘミングウェイの最高傑作は小説じゃなくて、この入門書じゃないかとも鳥人間は考える。

 

正直、ヘミングウェイの小説は、小説や漫画などの表現者にとっては読む価値はあると思うが、現代の人間が読んだら今一つなものが多い

 

まあ、それだけ現代の作家にマネされて手あかがついてしまった、ということでもあるんだけど。

 

話がそれたね。とにかく、この本は内容は素晴らしいだけど、翻訳が高くて手に入りにくい。近所の図書館をまず調べることをおすすめするよ

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
雉(Kiji)
ケーン……古い本しかないから高くなっているケーンね。

 

それなら原書、英語の本はどうなんだケーン?

原書は電子書籍なら安く買える

 

紙の本もアマゾンやe-bay(英語サイト)、abebooks(英語サイト)でそれほど高くなく買える。

 

とりあえずアマゾンのリンク張っておくよ。

 

現在、e-bayで注文してあるから、読んだらまた感想を書くね。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
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図書館で見つからなければ、原書読んだ方が早い気もするケーン……

ヘミングウェイ『日はまた昇る』

少し前に「洋書が「読める」という感覚は、英検何級あたりでつくのか」で紹介したアーネスト・ヘミングウェイの『日はまた昇る』だ。

 

これは、第一次世界大戦を経験したアメリカの若者が世間に価値を見出せず、その日暮らしをしている話で、後半にスペインが舞台になる。そこで、若手闘牛士が出てきて、主人公たちの仲間の女性が恋をする、という話もある。

 

ヘミングウェイが闘牛にハマったんだろうな、ということが読み取れる描写もある。

鳥人間(Birdman)
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闘牛自体を扱った、というよりは、「闘牛も話に出てくる」という程度のものだケーンね

 

英語小説の入門にいいかもしれないケーン。

雉(Kiji)
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闘牛への招待(文庫クセジュ)

次は研究者による解説書だよ。

 

硬派な入門書をたくさん手掛けてる白水社の新書シリーズ「文庫クセジュ」に収められた『闘牛への招待』だ。

 

闘牛の歴史と起源、20世紀の闘牛までを網羅しているよ。

鳥人間(Birdman)
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目次より
第一章 闘牛の諸起源
第二章 十九世紀スペインのコリーダ
第三章 コリーダの拡大
第四章 二十世紀の美学的コリーダ
第五章 二十世紀闘牛の技巧と戦略
第六章 コリーダをめぐる言説
エリック・バラテ/エリザベト・アルドゥアン=フュジエ(1998)『闘牛への招待』白水社 目次から引用

雉(Kiji)
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おお、これはまた本格的な入門書だケーン
写真は全くない。イラストも数点だけだから、文字を読むことが苦でない人向けだね。
鳥人間(Birdman)
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ヨーロッパカルチャーガイド6スペイン気分はいつもエスパーニャ

これは闘牛の説明の時に引用した本だ。

 

闘牛だけでなく、1990年代のスペインの特徴を一冊にまとめた本だ

 

研究書ではないが、旅行ガイドよりも詳しい説明が載っている、という感じかな。

鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
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さっきの闘牛の説明も詳しいわりに読みやすかったから、この中では一番入門書という感じだケーンね

 

雉(Kiji)
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丸々一回闘牛の説明だったからボリュームがあったんだケーン。
そうだね。でも、ここで紹介したものは表面的な流れだけだから、詳しく知りたい人は、上で紹介した本を図書館で借りるなりして読んだ方がいいよ。
鳥人間(Birdman)
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雉(Kiji)
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ううむ……雉はまず『ヨーロッパカルチャーガイド』を中古で買うケーン…

スペイン旅行記

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